単独事故ってなに?単独事故をおこした際の対処法

公道での単独事故も警察へ連絡が必要

単独事故とは、本人に100パーセントの過失や責任があり、事故当事者が自分のみで相手方が存在しないケースをいいます。
例えば、クルマをガードレールや電柱にあてたケース等の自損事故が当てはまります。

自宅敷地内などでの事故は自分の所有物に対する損害であり、警察への届け出は必要ありませんが、市道などの公道で発生した単独事故は警察への連絡が義務付けられます。
単独事故の連絡は非常に単純で、現場から警察に電話して事故が発生した旨と場所、被害の状況、単独事故後に取った周辺の安全措置を伝えます。
警察が到着して確認すれば終了します。

単独事故で警察へ連絡をしない場合のリスク

単独事故の当事者が、警察に連絡せずに黙って立ち去る場合もあると思われますがこの場合、報告義務に反しているというのみならず、後々面倒ですので必ず届け出ましょう。
近年は、監視カメラの設置やドライブレコーダー搭載車も多く、容易に事故当事者が見つけられてしまいます。
その場合、スタート時点から警察の印象は悪いのでやましい事情があるのではないかと疑いをかけられて捜査がスタートするという事になります。

特になぜその場を立ち去ったかについては、飲酒運転など悪質な行為があったのではないかという疑いからスタートするためいたって愉快なモノではありません。
また、実質的な損失として、保険会社にクルマの修理代や治療代を請求する際に必要な警察が発行する証明書類が出されずに、保険請求が出来ない場合があります。

警察に届出さえ出しておけば、ガードレールや道路標識の損害について物損の賠償請求を受けた場合でも、保険会社が証明書を取るなど手続きが可能で解決がスムーズです。
自宅の車庫入り口で車体を擦ったなどの、保険金請求を断念する覚悟のできる場合では届出は必要ないでしょう。
しかしガードレールや標識などの公共物を損壊した場合は、その後の問題を円滑に解決するため、警察への連絡は必須事項です。

現場の安全確保とバイクの移動

バイクの単独事故の特徴として、事故発生時に転倒しライダー自身も負傷する場合が多いという事が挙げられます。
転倒して、自力で起きられないような場合は周囲の方が警察や消防に連絡してくれるのを待つほかはありません。
事故後大事なことは2次事故を防ぐ事ですので、自力で動ける場合は冷静に周囲の状況を確認して、自分のバイクがクルマの通行の邪魔になっていないかチェックします。

もし邪魔になっている場合は安全を確保しつつ路肩などに移動させたり、後続車に注意喚起を促したりするようにします。
見通しの悪いカーブで転倒した場合などは、後続車が気付きにくいため危険です。
全てを一人で対応するのが困難と判断すれば無理をせず、速やかに警察や消防に通報しましょう。
事故防止の対策をとったのち自分も負傷を負っていれば診察を受けておきましょう。

物損事故と人身事故の違いは?

人身事故と物損事故の相違点と判断方法

「物損事故」は、物的な損害のみ発生した事故で、例えばクルマの破損、ブロック塀の損壊などが挙げられます。
対する「人身事故」は、交通事故を起因として被害者が死傷した事故を指します。
物損が生じて、人も死傷すれば人身事故となります。
つまり、2者の区分は、人身は人の命や体に損失を与える事故で、物損はモノのみが損壊し人はケガを負わないという事です。

加害者が事故を物損にしたがる理由

交通事故が発生した場合、加害者サイドは物損事故の扱いにしたがる傾向が見られます。
その理由は物損扱いにすることにより、加害者に複数のメリットが生じるからです。

第1点として、物損事故のケースでは、原則として加害者は免許の点数が加算されないのに比べ、人身事故のケースでは加算が逃れられません。
無事故・無違反が1年以上継続すれば点数は消えるのですが、累積点数が、6点以上になれば免許停止、15点以上になれば免許取り消しという厳しい処分が下されるのです。

第2点として、人身の場合には業務上過失傷害罪など罪に問われる恐れがありますが、物損扱いの場合、加害者は基本的に刑事罰を受けなくて済みます。

第3点目として、物損扱いとなれば、加害者サイドが支払う賠償金額は少なくて済みます。
具体的には物損のケースでは、慰謝料の概念がないことに加え、後遺障害もないため、示談交渉も短期間で簡単に終了します。

このように、物損扱いにしてしまえば、加害者にとって事故後の負担が小さくなり、メリットが大きいのです。
特に物損扱いにしたがる傾向にある加害者としてタクシーやトラックのドライバーが挙げられます。
それは、事故処理に対する知識が豊富で、物損扱いが有利であることをよく知っているからです。
悪質な場合は、被害者が救急車で搬送されたにも関わらず、ケガの程度が軽ければ治療費は払うから物損扱いで……と加害者に依頼することもあります。
タクシーやトラックのドライバーの場合、人身事故で点数が加算され免許がなくなれば仕事を失う事にもつながりかねませんので、気持ちはわからないわけではありませんが……。

交通事故を物損扱いとした場合の被害者のデメリット

交通事故を物損扱いにしてしまった場合、被害者にはデメリットが複数あり、事故でケガを負った場合には、人身事故として届け出なければいけません。
一旦届ければ、基本的には人身事故から物損に取り扱いを変更する事は出来ません。

物損扱いの大きなデメリットは、事故を起因としてケガをした場合でも賠償金額が著しく少額なモノになってしまう事です。
物損扱いでは、クルマの修理代程度が支払われる程度で、治療費や後遺障害が生じた際の慰謝料、逸失利益が支払われません。

特に問題となるのは、物損は自賠責保険の対象とならない事です。
物損扱いの場合は自賠責保険が機能しないため、相手の任意保険、それに加入していなければ相手との交渉で物的損害の金額を払ってもらわなくてはいけない事です。

いくらかかるの?交通事故で弁護士を雇う場合の平均相場

交通事故に損害賠償手続きを弁護士に依頼

事故当事者が事故後の示談交渉や調停、裁判に当たり、弁護士に依頼を検討するときのイメージは、コストが高くついてとても無理だと思う方も多いでしょう。
しかし弁護士に事故後の諸手続きを依頼した場合に得られる利点は、経済的な利益に限らず、精神的サポートも見逃せませんので、検討してみてはいかがでしょう。
ここでは、弁護士の選び方や弁護士に依頼する場合の費用に関して整理してみます。

弁護士を選ぶに当たり事前に無料相談を活用

現在、弁護士費用は自由化されており、事務所ごとに費用は異なりますので、依頼するに当たりどの程度費用が掛かるのかを把握しておく必要があります。

もちろん安ければ良いという性質のサービスではありませんので内容をよく把握して選ぶ必要があります。
交通事故を専門分野とする多くの事務所で事前の無料相談を行っています。
また、時間当たり5,000円~の低料金で相談に乗ってくれる事務所も多くありますので、何か所か相談してみて料金内訳、担当弁護士との相性などを勘案して決めることをおススメします。

弁護士費用と利益を比べて依頼するかどうかを判断

まず弁護士に依頼した際の費用詳細を確認して、どの程度かかるかを把握した上、メリットが大きいと判断した場合に依頼するようにします。
契約内容によってはコストを安く抑えて大きなメリットを享受できる場合がある反面、弁護士費用がメリットを帳消しにする場合もあります。
正式な依頼の前に、弁護士費用の料金の仕組みを確認して、理解しておく必要があります。

交通事故で依頼する場合の弁護士費用の内訳

弁護士に相談し交渉ごとや申請を依頼する際には、法律相談料や着手金、報酬金などの弁護士報酬関係の部分と必要経費部分からなり、この合計額が弁護士費用となります。

1.法律相談料は、弁護士に法律相談をした時間当たりの定額で算定されますので、相談の結果問題が解決しなくても、内容に不満であっても必要となります。
2.着手金は弁護士と示談交渉等を正式に契約する際に発生するもので、弁護士の初動活動費的な名目です。
着手金は、弁護活動の成果には連動しませんので、交渉がまとまらなかったり、期待した成果がなかったりした場合にも返金されません。

3.報酬金は、弁護活動の成果の度合いによって算出される成功報酬で、慰謝料が増額された場合などに発生します。
交渉がまとまらなかった場合は支払わなくても良い費用です。
4.交通事故の依頼における必要経費は法令上作成が必要な書類作成、示談や訴訟に関して必要な諸手続きの手数料などが挙げられます。
具体的には、印紙代や申請手数料、交通費、通信費などですが、遠隔地への出張があれば想定外に大きな金額になるケースもあります。

示談交渉を始めるタイミング

事故の損害賠償は示談で解決が9割

交通事故で当事者に損失が生じた場合、賠償請求が必要になりますが、最もポピュラーな解決方法は、加害者と被害者が互いに話し合って合意する示談です。
交通事故のおおむね90パーセントは示談で解決すると言われるほどで、長い時間やコストが必要な調停や裁判という方法はあまり活用されません。
可能な限り、事故当事者双方が納得出来る内容で、示談を成立させることが望ましいと言えます。

示談交渉は事故発生直後から開始出来る

示談は、事故発生後いつからでもスタートする事が出来、事故現場で賠償金額の合意が出来て口頭で約束した場合でさえ、示談の成立が認定されるケースもあります。

しかし、チョットした事故のケースでも、発生時に感じなかった痛みや症状が時間の経過とともに出てきたり、予想以上の治療費が発生したりするケースがありますので、その場で示談交渉の合意に至るのは好ましくありません。
一旦示談が成立したと認定されれば、事情が変わったからと言って、内容を変更したりリセットしたりすることは極めて困難です。

ケガを負った場合は治療終了後に交渉をスタート

被害者が請求する損害賠償金は、ケガによる治療費や薬品代に加えて通院に要したタクシー代など交通費も対象に含まれます。
ケガが完治するまでは医療費を含む賠償金額が確定しませんので、ケガが完治したのち示談交渉をスタートさせるのがベストです。
また、事故とケガの因果関係を明確にするため事故後時間を置かずに病院で診察を受け、交通事故を起因とするケガであると診断してもらい、完治するまで通院することがポイントです。

後遺障害が残るケースは症状固定のタイミングで示談スタート

被害者が重大なケガを負った事故のケースでは、示談交渉スタートのタイミングは症状固定の時がベストです。
ケガの治療期間が長くなると、相手側の保険担当者から、早く示談交渉をスタートさせたいと連絡が来る事があります。

しかし慌てる事無く治療を続けて、これ以上は治癒が見込めないというタイミングで後遺障害が確定されるので、担当の医師と相談のうえで症状固定を行い、示談交渉をスタートさせます。

相手の言うままに慌てて示談をスタートした場合、示談成立後にほかの後遺障害が診断されて、対象外となる可能性があるのです。
一般的なケガのケースでは事故発生の後約半年程度で医師に症状固定が認定されると言われます。

症状固定の意味

症状固定とは、さらに治療を継続しても回復が期待できないタイミングを言います。
これは医学用語ではなく、損害賠償の世界で使われる用語です。
医学的には、ケガの症状がなくなるまで治療を継続すべきですが、一定の時期に損害賠償金額を確定しないと、加害者にとっても被害者にとっても不安定で心労が募るだけです。

そこで一定の時期に症状固定を行い、以降の治療費などは後遺障害として逸失利益などを算定して、賠償金額の支払いを行った方が合理性があるとの理論によるものです。

安易に謝るのはNG?事故直後の正しい対応

事故発生直後の対応

事故を起こした場合にすぐに行うべき事は負傷者救護や警察・消防への連絡とされますが、行うべきでない行為も少なくありません。
これは法令で定められているわけではありませんが、気付かずに取った行為がのちの裁判で重い罪を問われたり、示談交渉の際に不利な結果をもたらす場合もありますので注意が必要です。

安易に謝ることを避ける

交通事故で先に謝るべきではないと言われることがあります。
交通事故の発生直後はパニックに陥り、特に加害者は全面的に非があるかのように、誤る場面がよく見られます。

しかし、実際には当事者のうちいずれに責任があるのかは容易に判断出来ないケースも多くあります。
加害者であったとしても過失の割合が少ないケースも珍しくありません。
にもかかわらず容易に謝ってしまえば、相手に全面的に非を認めていると受け取られかねませんので、避けるべきなのです。
特に私たち日本人は、すみませんという言葉を使いがちですが、この言葉は大変あいまいで、謝罪以外でも様々なシーンで広く使われる言葉です。

混雑する駅のホームで肩が触れ合っても互いにすいませんというケースもあれば、レストランで注文を頼む時にも使うなど、人により様々なシーンで使います。
そのためすぐに口に出る言葉ですが、言われた相手方がどんな人物でどう受け取るかわかりませんので、「すみません」は避けるべきです。

これは何も自分を正当化しろ、あるいは誠意を見せる必要は無いという意味ではなく、相手が悪意を持つ場合につけ込む余地を与えないという意味です。

その場で示談に応じない

特に事故の被害者であるケースではその場で示談に応じないように注意しましょう。
悪質な加害者のケースでは現場で示談交渉をまとめて、十分な賠償をせずに少額で終わりにしようと考える傾向があります。
また、悪意は持たなくても業務中の事故などで職場に知られるのを避ける場合や違反の点数で免許停止等を受けるのを避けるために警察に連絡せずに示談交渉を申し出る相手もいます。

仮に、十分な賠償金を示された場合でも事故現場で示談に応じる行為は得策ではないので注意しましょう。
相手が急いでいる場合でも、当方にその後のスケジュールがあり時間がなくても、相手の氏名や連絡先を確認した上で、その場で示談に応じてはいけないのです。

交通事故は発生時には体にダメージはないと思っても、時間が経過して痛みなどの症状が出る事がよくあります。
このように被害者が思いのほか通院費がかかったり、事故発生時に現場では自覚のなかったケガがあったり、数日後にむち打ち症などの症状が出たりした場合、一度合意してしまった示談内容は、リセットできません。
また、事故現場で取り交わしたメモ程度のモノでも、示談の成立が認定されるケースもありますので注意が必要です。

相手が違反していた場合も恫喝する態度は避ける

現在は、スマホやドライブレコーダーで相手の行動を撮影できる時代です。
だからというわけではないのですが、相手を脅すような態度は慎むべきです。
恫喝した場合、メンタル的な苦痛を理由として慰謝料請求に発展する事さえありうるので冷静に対応するよう心がけましょう。

事故直後は平気でも病院にいくべき!その理由とは

状態に関わらず交通事故当事者は病院で診察

交通事故の当事者となった場合、見るからに負傷を負って自力では起きられない、または失神しているようなケースでは、救急車が到着して直ちに病院に搬送され診察を受けることになります。

また、意識が明瞭で会話が可能で自力で歩けても、出血や激しい痛みがあれば、一般的に救急車で搬送されるはずです。
問題なのは、事故直後にケガの自覚症状がないケースでも、体に大きなダメージを受けているケースがある事です。
たとえ事故後に何らかのスケジュールがあり病院に行く時間はないと思っても、事故後は病院で医師の診察を受けるようにしましょう。

示談交渉のため因果関係を証明するため事故直後に受診

示談交渉などで損害賠償請求をするには、手続き上医師が発行する診断書が求められます。
その際、事故から時間が経過していれば負傷の原因が事故であることを証明する事が困難となります。
事故の後スケジュールを重視し、軽いケガだから診察は後日で良いと思っていると、事故とケガの因果関係を証明できず、賠償請求が出来ないケースもあるのです。

事故後直ちに診察を受ければ事故を原因とするケガだと証明できたはずなのに、ケガが軽いほど、時間の経過とともに原因が不明確となりがちなのです。
また事故により救急車で緊急搬送された患者への医師の対応と時間が経って一般外来で診察を受ける医師の対応が異なる事態も考えられます。

いずれにせよ、一般的には事故当日から2週間を経過すると、ケガの原因が交通事故だと証明するのは困難だと言われています。
また、ケガの治療を行う際要した費用の領収書は、損害賠償請求の際に提出しなくてはいけませんので保管が必要です。
タクシーほかの交通機関を利用して病院に行くケースはその際の領収証も保存しておきます。
事故発生以降、事故を起因として発生したすべての費用の明細を記録して、領収証がとれるものは必ず保存して、もれなく賠償してもらうようにします。

後日痛みが生じる可能性のため事故直後に診察

身体がダメージを受けていても事故直後は、出血がなかったり負傷の痛みを感じられなかったりすることがあり、後日痛みが現れるケースが珍しくないため診察が必要です。
これは2パターンに分類され、ケガをしているのに痛みを感じないケースとダメージによる痛みや症状が時間の経過とともにあらわれるケースがあります。

1つ目を解説すると、人は興奮状態にあるときは痛みを感じないように進化してきました。
これは生きていく上で重要なことで、痛みに耐えられずに動けなくなれば危険から逃げられないからでしょう。
生理学的に説明すれば事故直後は脳が興奮状態となり、脳内モルヒネといわれるエンドルフィン等の強いホルモンが出されることで痛みを感じなくす事がわかっています。

2つ目の事故後時間の経過とともに症状があらわれる典型的なモノは、むち打ち症です。
症状は、首の痛みに限らず、はき気や眩暈等があり、事故発生後数日~1週間程度の時間が経過したのち、自覚症状があらわれるケースも多いとされています。

警察の実況見分とは?用語解説と重要性

警察官にはシッカリ状況を伝える

交通事故が起きたことを警察に連絡するとおおむね7分程度で警察官が到着します。
警察官は事故現場周辺の安全を確保しながら事後処理を行うとともに、事故当事者から前後の状況を細かく聴取します。
これは通常実況見分と呼ばれるモノで、裁判に加え示談交渉後の保険請求などの諸手続きで必要となる交通事故証明書発行のためにも必須です。

また示談交渉において損害賠償の過失割合を決定する要因として極めて重要です。
相手に気を使う必要はありませんので、自分の主張を明確に伝達するようにしましょう。

実況見分調書

一般に警察が行う実況見分とは、刑事訴訟法に定められている職務で、犯罪や事故が発生した現場で物的証拠や証言をもとに、犯人や被害者、目撃者などの位置関係や発生状況といった事実関係を把握することです。
交通事故のケースでは、発生原因や発生状況を客観的に把握するために、発生後出来る限り早いタイミングで、当事者立会の下で行われるのが原則です。

実況見分で把握できた事故の発生原因や発生状況などの結果を記録する書類を実況見分調書と呼びます。
実況見分を行う際は、当事者同士互いが警察官と話す声が聞こえない程度の距離を取って、個別に発生状況の事情の聞き取りが行われます。
このように個別に聞き取りが行われる理由は、口裏を合わせる事がないようにとの意味もあるでしょう。
また、双方から同時に同じ場所で聴取をすれば、互いの主張が異なる場合にその場でいさかいとなりがちで、聴取が進まなくなることを防止する意味もあるようです。

前述のとおり実況見分は刑事訴訟法の規定に基づき警察が職務として行う証拠収集活動であり、裁判の際には大きな意味を持ちます。
事故の発生原因や状況、被害の度合いを明確に把握すべく、現場周辺に残されたタイヤの跡や破損部品の飛散状況など物的証拠を物理的に把握します。
また物理的把握に加え、証拠の存在や状況を視覚・聴覚・触覚などの五感をフルに活用して認識し、事故の真相を把握すべく捜査を行うのです。
裁判となった場合、この実況見分調書は事故発生状況をあらわす最重要証拠となるため、注意を払って正確に伝える事が重要です。

実況見分後に作成される供述調書

実況見分を行った結果を記録した実況見分調書に基づき供述調書が作成されます。
当事者が話した内容を聞き取って記録し、被害者と加害者互いの同意を得た後、署名捺印を押して調書は成立します。
作成された供述調書は警察署を経て検察庁に送られて、そこで起訴するか不起訴処分とするかが決定されます。
交通事故発生後、警察へ連絡して到着までの間は負傷者の救護活動や周辺の交通の邪魔にならないような措置をする他は、現場保全が求められます。

加害者が自分に不利な証拠を隠すなどした行為も、被害者は記録するなどして確実に警察官に伝えます。
一生に何度も遭遇しない交通事故に直面し、普段話をしない警察官に聴取を受けると、事故のパニックに加えて慣れない緊張状態に陥り、無意識に自分の不注意を伺わせる発言をしがちです。
事故の被害者であるケースでは、責められることはありませんので、冷静に自分の主張を正確に伝えるようにします。

事故に遭ったら必ず相手の身元を確認しよう

保険申請のためと割り切り事故相手の身元を確認

最初に、事故を起こしてしまった相手の身元確認を行います。
交通事故は日常的に当事者となるわけではないので、事故発生のすぐあとは互いにパニック状態になり、相手と落ち着いて会話するのは困難です。
しかし、消防や警察に連絡したあとに、のちの損害賠償のためと断って互いの氏名や連絡先などの情報を確認し合う必要があります。
確実を期すために、口頭だけでなく免許証を確認したり、名刺をもらったりするとよいでしょう。

氏名や連絡先は記録が確実

名刺を受け取るケースでは忘れてしまう事はないのですが、免許証を見せてもらったり、口頭で教えてもらったりした場合は忘れてしまうリスクが有ります。
前述のとおり事故直後はパニックとなっており、加えて警察官から状況の聴取を受けたり、病院で診察を受けたりする間に失念してしまう恐れがあるのです。

メモを取っておく、あるいはスマホの録音機能を活用するなどして記録に残すことが確実です。
また、スマホのカメラを使って免許証を画像で残す方法も有効ですが、この場合は相手とトラブルにならないように事前に許可を受けてから撮影するようにしましょう。
事故後の示談交渉などにおいて相手との関係を良好に保つ必要があるのです。

氏名も連絡先も教えてくれない場合

事故の損失が人身であるか物損であるかに関わらず、加害者は損害賠償の責任を負うので、氏名や住所、連絡先を伝えるのは当然と言えます。
しかし、何らかの事情のため自分の身元を歌えてくれないケースがあります。
例えば事故直後でパニックとなり、自分が事故を起こした加害者ではないと思い込もうとしている場合が挙げられます。

また、業務中の事故の場合、会社に連絡がいくと何らかの処分があると思い隠そうとするケースもあります。
悪質なケースでは、すでに交通違反等の加点が多く、免許停止や免許取り消しを避けようとする加害者さえいます。
このような場合の対応として、すでに警察に連絡していれば、数分後には警察官が到着しますので、無理矢理相手から聞き出そうとせず、クルマの特徴や車両ナンバーをメモしたり、スマホで写真を撮ったりするとよいでしょう。

事故相手の多くの情報収集が重要

特に業務中の事故のケースでは、相手の名刺を受け取る事は大きな意味があります。
事故車両が会社名義だった場合、示談交渉は会社が相手となるケースが多いので、当方側から進んで名刺を渡せば先方も抵抗感少なく渡してくれるでしょう。

さらに加害車両が加入する保険会社も把握すればより円滑に交渉を進める事が可能です。
理由は、実際の示談交渉は直接加害者本人とするのではなく、保険会社の代理人と話し合いを進めるケースがほとんどだからです。

警察に通報したほうが良い理由は?到着するまでの間にすべきこと

事故を起こしたら直ちに警察に通報

交通事故が発生すれば、加害者は程度を問わず必ず警察に通報すべきことが法令に定められており、これに反すると刑罰が待っています。
また、被害者サイドにとっても、損害賠償請求を受けるためには警察が発行する書類が必要なので、このためにも通報は必須です。
事故を起こしたらパニックに陥りますが落ち着いて対応する事が必要ですので、事故を起こした場合の対応を整理してみましょう。

事故が発生した場合の加害者・被害者双方の対応

交通事故が発生したら起こったら、クルマなどの運転をやめて安全な場所に停車し、負傷者救護に努めるとともに周辺での危険防止を行わなくてはいけません。
その後速やかに消防(負傷者がいる場合)と警察に事故の発生を通報し、警察官が現場に到着したら事故の発生状況などを出来るだけ正確に報告します。

比較的程度の軽い物損事故の場合では、加害者が警察へ通報するのを避けようとするケースがあります。
加害者が警察へ通報することを避けたがるケースは、過去に事故や違反で大きく減点されており、今回の事故が警察に知れると免許停止などの処分を受けそうなときが代表例です。

また、業務中の運転で事故を起こした場合、会社に知られたくないという心理も働きます。
事故が発生した場合の警察への通報は法令上定められた加害者の義務なのですが、被害者サイドで行っても構いません。
加害者サイドへ警察への通報を求めても応じない場合は、自ら警察に通報しましょう。

この場合注意が必要なのは、その場での示談交渉には応じないことが挙げられます。
もちろん、加害者が免許を取り消されたり、失業したりするのは気の毒なことですが、情に流されてその場で示談に応じると、被害者は後で後悔しかねません。

警察に通報するメリット

被害者は、警察が作成した証明書の発行がないとケガの治療費やクルマの修理代など損害賠償がしてもらえない可能性が高いです。
事故直後はたいしてケガもなく、加害者側がその場で納得出来る示談金を示したとしても、時間が経過して事故を原因とするむち打ち症等の障害が生じる可能性もあります。

必ず警察に通報して事故の発生を通知し、病院で医師に診てもらい、事故を原因とする症状が治癒してのち示談に応じるのが原則です。
一旦示談すれば口頭であっても成立が認定されるケースもあり、その場合は後で再交渉することは困難となります。
このことは加害者側についても同様で、保険金の請求ができなくなります。

警察へ通報後到着まで

警察は事故の通報から7分程度で到着すると言われます。
それまでの時間にすべきことは、周辺の交通の安全確保と法律で義務付けられた報告事項について把握する事です。
すなわち、発生した日時と場所、死傷者の数や程度、壊れた物とその程度、当該車両の積載物、事故発生後に行った措置です。
タイヤの跡など事故の状況が消失する事柄はスマホで撮影したり、別途報告しようと思う事はメモしたりするとよいでしょう。

示談で合意に至らなかった場合はどうなるの?

賠償額を取り決める示談交渉

事故が起きたら、事後の解決のため通常は当事者間または保険会社が入り、賠償金の査定に関する合意に至る交渉つまり示談が行われます。
発生した交通事故のおおむね90パーセントは示談で解決されています。
交通事故後の示談では、加害者サイドが被害者サイドに、事故の発生により失った人的・物的な損失を経済的にお金で賠償する話し合いです。

示談には期限がある

示談交渉自体はじっくりと時間をかけて納得いく賠償を受けるべきですが、時間をかけ過ぎると請求権自体がなくなります。
注意が必要なのは権利行使に期限が定められることで、民法上の損害賠償請求権は3年という時効が定められ、損害の事実と加害者を認識してから3年間これを行使しないとなくなると定めています。
また、加害者側から保険会社に対する権利行使期限も同じく3年です。

ただし任意保険は商品により異なるケースがあるため、行使期限が来る前に確認しましょう。
一般的には運転者側は事故後速やかに保険会社へ連絡しますので、あまり意識する事はないと思われます。
ところが、被害者サイドは、自然に3年で請求権が失われてしまいますので、必ず3年の期限を強く意識しておく必要があります。

示談で解決しなければ調停や裁判

示談で解決しないケースでは、第三者に仲介を依頼することになり、調停や裁判に訴えるという手段があります。
通常のケースでは示談がまとまらなかったら調停を選びます。
調停は、裁判官を含む委員会メンバーが双方から聞き取り、損害賠償の妥協案を示す制度で、裁判所がリードして損害賠償交渉を進めてくれます。

調停を飛び越して裁判へ持ち込む方法もあるのですが、解決までに長い時間と弁護士費用など訴訟コストもかかりますのでコストが安く上がる調停を選ぶ方が多いのです。
調停の手続きは自分で裁判所に行き調停の申し立てを行うのですが、初めての方は弁護士事務所に相談するとよいでしょう。

調停に移行した方がベターな場面

1.事故当事者による交渉が平行線をたどり各条件でまとまる見込みがなかったり、長期化して自身の新たな出発の障害となり解決のめどが立たなかったりする場合。

2.相手方が弁護士を立てるなどして交渉力が高度で当方に不利な条件で示談をまとめざるを得なくなりそうな場合や正面から交渉するのが怖い相手の場合。

3. 調停の結果は、裁判における判決と同様に、加害者に対して強制執行力があるため、相手に損害賠償を完遂する意思や資力が十分ではないと見込まれる場合。

4. 示談交渉は法的には期限が定められておらず、相手が示談内容や条件に合意したくないケースではズルズルと長引かせること出来るため相手側に圧力をかけたい場合。